昨日実家に行った。
父のケアセンター通所の書類に「ハンコが要るから来て欲しい」と
呼び出しがあったのだ。
結局ハンコは母の勘違いで、家族以外の連絡先を記入すれば
用事は済んだ。父は、お昼寝中だったので、私が留守番。
母は、久しぶりに美容院に出かけた。
母が出かけている時に、ガスの点検が来て外で話を聞いていると
「誰か!来てくれーーーー。」と父が叫んでいた。
慌てて行くと、トイレに行きたくなって誰も居なくて焦っていた。
「お母さんは?」と心配顔だ。
「転倒以来、ことばを失ってしまった。」とひとしきり、ため息まじりに
話し始めた。「弱っちゃうなあ。」と頭を抱える。
「特に、おかあさんに僕の言葉が通じない。もっと解ってくれてもよさそうなものなのになあ。」
と愚痴は結構スラスラ大きな声で話す。
「結局伝わらなくて、二人でションボリします。」だって。いい表現をする事も多いのにな。
教師生活が長かったので、自分主体で話す癖が
ついたのだろうか?正しく相手が理解しないととてもイライラする。
「どっちも意地張ってるのかな?お母さんも疲れているんだよ。
美容院から帰って来たら、綺麗になったね、って言ってみたら?
前はお母さんの事大好きだったじゃん。」などと話す。
すると突然、
「観たいTVがもうじき始まるから、起きて車いすで居間に移動したいです。」と言う。
暖かかったから、薄着で寝ていた。服や靴下、ズボンの着替えを手伝い、
車いすを持って来る。想定外の行動で、私がパニくる。
言い出したら即、行動したい父。
体と考える事が連動しにくくなっているから、ドスンと座ってしまったり、一人で立っている
のは危ない。「違います!そうではありません!。・・・」ちょっと怒られながら、
何とか居間に移動。
今度は、車椅子と机の配置がお気に召さず。
「もういい!お母さんが来たら相談します。」と諦める。
こうなんだな、これでは母も大変だ。毎日気に入る配置が変わるらしい。
それは、父本人にもその日にならないと解らないらしい。
どうでもよさそうな事に限って頑固に拘る、ことばが見つからないから
本人はもどかしく、気が悪いらしい。
たくさん、沢山本を読んで来た父。大工の息子だから本なんか読まないで手伝えと言われ、
隠れて暗い夜に本を読んで近視になったほど。夜間高校、普通高校、大学、全部自分で
働きながら通った。知識は読書からといつも言っていた。
立っても、座っても本を読んでいた。
頭の中では、単語がグルグルとたくさん浮かんでいるらしい。それを選んで、言葉にするのが
とても難儀だと言う。いよいよ困ると英語まで出てくる。
急に「マウス!ください。」というので、ネズミ?パソコンのマウス?と思ったら「入れ歯」の事だった。
わかると連想ゲームみたいで面白かったので、喜んで笑ってしまうと
「そんな事で笑わないでください。」と言う。プライドも高いので笑いすぎもダメらしい。気難しい。
母が帰っても、父は「綺麗になったね。」と言わなかった。
母は「わざわざ複雑に言おうとするみたい。私も疲れたよ。」
会話が増えて良かったなんて、離れて暮らす私の勝手な思い違いだった。
右手も動かないから得意だった字を書くこともできない。何にも思うようにならない。
最後の武器だった、豊かなボキャブラリーが表現の邪魔をする。
それでも大きな声を出して少し威勢がついたようで、
帰る頃にはニコニコして好きな韓流ドラマを見ていた。
金曜日からケアセンターへの通所が始まる。
9:30~17:30まで知らない人々と辛抱できるだろうか?
どうしたら少しでも安心して生活できるだろうか。
姑に話したら、「今の状態をそのまま受け入れるしかないねえ。可愛そうだね。」
と本当に気の毒そうに言う。姑には子供の頃からの強い信仰の力があるように思う。
父にとっては、信仰は救いにならなかったのか?
寒さが戻ってしまった。今日はちっとも部屋が暖まらない。猫は言葉を持たないけれど
要求する方法は猫なりに色々考える。